朝のひととき

朝ぁ〜朝だよぉ〜 お酒飲んで気象操作するよぉ〜」
 朝の静寂を破って、ユメミの声が響く。 声のすぐ近くで寝ていたミリィは、騒音の元を断とうと、精霊道具に手を伸ばそうとする…が、腕が思うように動かない。
(これは…もしや、金縛り?)
 一瞬そう思ったのだが、脚や首は普通に動かせる。 腕と胴が何かで縛られたように動けなくなっているので、どうやら金縛りではないようだ。 自分の状況を確かめるように少しずつ身体を動かすと、何者かに後ろから抱きつかれていることが判る。 背中に当たる柔らかい感触から察するに、どうやら大柄な女性のようだ。 首筋に当たる吐息のくすぐったさに耐えながら、首を動かす。
「んにゅう〜〜」
 聞こえた声と、ミリィの視界の端に映った顔は、予想通りユメミであった。 目覚まし時計に録音した自らの声を聞きながら、まったく起きる気配がない。 それどころか、ミリィが首を動かしたために、ミリィの耳たぶをユメミが口に含む形となってしまった。
「きゃっ……お、起きろ〜〜〜」
 ミリィが叫んでも、ユメミは一向に起きる気配を見せない。 それどころか、ミリィを抱きかかえた腕をミリィの胸に回し、ミリィの背中には自らの胸を押し付けてくる。
「うみゅ〜…ダメよぉ〜ミリィぃ〜……ヘンなトコ触っちゃぁ〜……」
「あうっ……ヘンなトコ……触ってるのは……あっ……アンタでしょ!」
 叫んでも暴れても、まったくユメミは目を覚まさない。 それどころか、ユメミの手の動きに、せっかく目が覚めたミリィの意識まで怪しくなってくる。
(あうっ……もう……ダメっ)
 そう思った瞬間、パァン……と乾いた音がしたかと思うと、身体に自由が戻る。 無意識のうちに、自分の精霊道具をハリセンに変えて、ユメミにツッコミを入れたらしい。
「いたたた……うにゅう〜? あ、ミリィぃおはよぉ〜…どぉしたのぉ? 顔が赤いわよぉ?」
 目を覚ましたユメミが、太平楽に挨拶を交わす。 寝ている間にミリィに何をしたのかは、まったく覚えていないようだ。
「ユメミ…よく眠れた?」
 まだ頬を上気させたミリィは、どうせ通じないと思っていても、そんな皮肉を飛ばすのが精一杯であった。 問われたユメミは、やはり太平楽に、
「うん、詳しい内容はぁ覚えていないけどぉ、とぉっても気持ちよかったわぁ」


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