一線ってドコ?

 昼休み、いつものように菜々絵と蘭が談笑し、もう一人の友人である色川温美(いろかわあつみ)も会話に参加している。 やはりいつものように、蘭は菜々絵を自らの膝に座らせ、後ろから抱いている。 そのうち、話題は菜々絵の母・杜江の話となり、蘭が膝の上の菜々絵に呟いた。
「菜々絵ってさぁ、小母さんと毎日こんなコトしてるんでしょ?」
 蘭の両手は、後ろから菜々絵の胸を制服の上から包み、感触を楽しむように蠢いている。 1日1度は見かける日常の光景なので、クラスメートの誰も突っ込みを入れたりしない。
「うん……でも蘭ちゃんだって毎日してるじゃない」
 応える菜々絵の顔に朱が射した。
「休日まで毎日会えるとは限らないでしょう。 でさ、小母さんとはドコまでしたコトあるの?」
 菜々絵が、実の母親である杜江に惚れていることも、菜々絵と杜江が身体を触りあったりしているのも菜々絵の友人たちには既知の事であるが、具体的に何処までの関係か聞いたことはなかった。
「あ、あたしも訊きたい〜」
 温美も、興味津々で身体をのり出し、声をあげる。 身体をのり出した際に座っていた椅子から降りたため、二人の脚の間に潜り込む姿勢となった。 温美がしゃがむと、菜々絵と蘭の下着を覗き込む。

*

「ん……えと……わたしはまだ最後まではされて……ひゃうっ」
 蘭が菜々絵の胸を揉み続けているので、胸への快感で途切れ途切れになりながら、菜々絵が答える。 なかなか話題が進まないので、温美は不満そうである。
「こら、蘭止まれ」
 温美が蘭のスカートに手を入れ、下着の上から蘭の敏感な部分を指でつつく。
「うひゃあ! ちょっと温美、ソコは菜々絵専用なのっ!」
「菜々絵のパンツ、もうぐしょぐしょよ。 答える余裕くらいあげなさい……あ、蘭のも濡れてる」
「実況しなくていいっ!」
 蘭が抗議するが、とりあえず菜々絵の胸を揉む手は止まった。 蘭の手が止まったので菜々絵は一息つくが、すぐに好奇の視線に晒される。
「『最後までは』って、じゃあドコまでならされたの?」
 その後数分にわたる質問を行い、菜々絵の答えを引き出した。 その結果、菜々絵の身体の表面は、殆ど全てが杜江の指と舌による愛撫を日常的に受けていた。 菜々絵もまた、杜江の体表のほぼ全てに触れていた。
「つまり、ココの濡れているところも?」
「うん……お風呂に一緒に入ったら、ココはお互いに相手のを洗うの」
 温美が菜々絵のスカートの中を指差すと、菜々絵が肯定する。
 菜々絵の返答に、三人の間に短い沈黙が流れた。

「ちょっと菜々絵さん……ソレのドコが『まだ』なのかなぁ?」
「ばっちり行くトコまで行ってるじゃないの〜」
 蘭の表情が険しくなる。 温美は呆れ顔をしただけであるが、それは温美が既に杜江と「最後」までしたことがあるからに過ぎない。
「ふえっ? でもでもっ、まだわたしは中に入れられて……」
「入り口を触られてたら、充分『一線を越えて』るわよっ」
 菜々絵の「たとえ股間を触りあっても、胎内に指を受け入れていなければOK」とでも言いたげな返答に、蘭がツッコミを入れる。 そして、蘭が後ろから菜々絵のスカートを捲ると、温美がその中にもぐりこむ。
「あの、何を……ひゃうんっ」
「んふふふ〜、ソコまでされてるんだったら、私たちも同じコトしていいよね〜」
 菜々絵の胸の尖端をつまみながら、蘭が菜々絵の抗議に答える。 菜々絵としては、蘭や温美に触られるのは問題ない。 問題は、母親より先に二人に「最後」まで行かされそうな勢いとなっているのと、今居る場所が共学校の教室であることであった。 そこへ、横から別の声が掛かってきた。

*

「あなたたち、何やってるの?」
「あ、大窪先生……」
 声を掛けたのは、担任の大窪千歳であった。 授業も生活態度にも厳しい先生として知られているので、蘭と温美は千歳を見た途端、どんな叱責が待っているかと顔が青くなった。 ましてや、千歳は菜々絵に惚れているという噂もある。 但し、当の菜々絵はその噂が事実であると知っていた。 かつて、高校生であった千歳が杜江とともに自宅に来たことがあったためである。 杜江が保健室で飾っていた菜々絵の写真を見て、一目惚れしたことも千歳本人から聞いていた。
 千歳が三人に近づき、声を掛ける。
「そういうコトは、あまり人前でしちゃダメよ。 とくに男子の前だと危ないから」
「ほぇ?」
 意外な内容の注意に、三人が間抜けな声をあげる。 女子の不純同性交遊が絡むと、千歳の注意はおかしな方向に行ってしまう。 確かに、指摘されてみると、周囲に居る生徒のうち、男子が何人か前屈みの不自然な姿勢で歩いてはいるのだが。
「あなたたち、ココが共学だってコト忘れてたでしょ」
 この学校は、数年前まで女子校だったせいか、女子生徒の割合が高い。
「それに、あなたたちにそんなコトされたら、先生も我慢できなくなっちゃうわ。 大沼さんったら、そんな可愛い声出して……」
「あ、相変わらずですね」
 顔を赤らめ、両脚をもじもじと擦り合わせながらの発言に、声を掛けられたのは菜々絵だけであった。 そして、蘭と温美も、千歳の菜々絵に対する噂が事実であると確信した。


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