メイドさんに囲まれて(後編)

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お風呂でドキドキ

 この日の夕食は、澄子の歓迎パーティということもあって、瞳・菖蒲のほかメイドのほとんどが一堂に会し、殊のほか豪華なものであった。 メイドたちの自己紹介やら、お調子者のメイドによる余興の披露やらで楽しいひとときを過ごした。 ちなみに、菖蒲は澄子の隣に座り、なにやら腕を澄子に向けて動かしている。
「澄子、スープを飲むときは……」
 どうやら、
「澄子さま、スープをどうぞ」
「うわ〜、美味しいですぅ」
 可憐な少女が上品にスープを飲む姿に、菖蒲の動きが止まる。 姿勢を正して自分の席で食事を始めると、しばらくして次の皿が来る。
「ナイフとフォークはね……」
「ローストビーフでございます」
「こんなに大きいお肉の塊は初めてです〜」
「只今お切り分けいたしますね」
 菖蒲の反対側に座った琴音が、澄子のために肉を切り分ける。 その肉をさらに切って口に運ぶ澄子の姿は、菖蒲には可憐そのものであった。 一口分を飲み込んだ後で、菖蒲が澄子の背中から反対側の方に手を廻しながら、触れられずに手をぴくぴくさせているのに気付く。
「菖蒲お姉さま?」
「菖蒲さま、何をなさっているのでしょうか?」
「……な、なんでもないわ」
 テーブルマナーを教える口実で澄子に抱きつく計画が空回りしたので、拗ねてしまった。

夕食後は風呂に入るのが以前からの澄子の習慣であったので、琴音に浴場に案内してもらった。 予想通りというか、温泉ホテルの大浴場のような広大な面積で、アパートの風呂と比べようという気も起きなかった。 服を脱いで浴室に入ると、当然のように琴音もついてくる。 風呂なので、当然全裸である。 普段性的なコトには厳しく、セパレートの水着すら恥ずかしがっていた琴音も、さすがに風呂場では平気らしい。
「あの……琴音さん……やっぱり一緒に?」
「ええ、澄子さまのお身体を洗わせていただきますわ」
「は、裸で……ですか」
「お風呂は裸で入るものでございましょう?」
「はい……そうですよね」
 琴音は涼しい顔で答えるが、澄子が望んで得られていないものを全て持ち合わせた美女の裸体が至近距離にあるのは、落ち着いていられない。 すらりと伸びた背丈も、たわわな実りと張りを両立させた胸も、滑らかな腰の曲線も、3年の年齢差だけでは埋められない違いを澄子に感じさせた。
(グラマーでいいな……でもステキだな〜)
 そんなことを考えながら洗い場に行くと、洗い場の椅子が普通とは少し違っているのに気がついた。 銭湯などにおいてある椅子とは違い、椅子の前後を貫通する大きな溝がついている。
「なんか不思議な椅子ですね」
「私も、この家以外では見かけませんね」
 母親も古瀬家のメイドで、生まれたときから古瀬家に居る琴音にとっては、この椅子に違和感がないらしい。 もちろん、琴音もこの屋敷以外での使われているところなど観たことがないし、澄子にいたっては初めて見る形状である。
「それでは、お体を洗いますね」
「えっ、そんな、悪いです……」
「澄子さまは御主人でございますし、私個人も是非洗いたいと思っておりますので、遠慮は御無用ですわ」
 琴音によると、古瀬家ではメイドが主人の身体を洗うのが普通とのコトなので、まず髪から琴音に洗ってもらうことになった。 シャンプー代を節約するため、澄子の髪は短く切りそろえられている。 それで、後ろから頭を擦られると、肩に琴音の胸の感触が当たって、どうしても気になってしまう。 琴音の「痒いところはございませんか?」も、どこか遠くで響いているような気がした。
 頭を洗い終わり、スポンジを澄子の背中に当てる頃、ドコからかメイドたち(もちろん全裸)がわらわらと澄子の下に集まってくる。
「私は、右腕を洗わせていただきます」そう言ったメイドは、澄子の右腕を自らの胸で挟んでしごきだした。
「では、私は左脚を」別のメイドは、澄子の脚を自らの股で挟んだ。
「あの、本当に洗っておられるのですか?」澄子の背中を洗っていた琴音が、他のメイドたちに突っ込む。 ちなみに、澄子は顔を紅くして黙りこくっている。 そのうち、メイドたちは琴音にもちょっかいを出してくる。
「琴音の背中も流してあげる〜」
「あの、私は…って、胸で洗わないで下さいっ! そこ、ドコ触っているんですかっ!」
 風呂でも遊ばれてしまう琴音であった。
 集まってきたお邪魔メイドたちをなんとか散らして、作業を再開する。
「まったく、皆さんったらすぐえっちな方向に持っていこうとするんですから」
 琴音はそう文句を言いながら澄子の身体を洗うのだが、当の琴音の手が動くうちに、澄子もなんだかいい気分になってくる。 そのうち、背中を洗う体勢のまま澄子の胸を洗い出した。 澄子の胸がスポンジに、背中が琴音の胸に愛撫される。 その快感は、澄子が初めて感じるものであった。
「あ、あの、琴音さん……きゃっ」
「ちょっとくすぐったくても我慢してくださいね。 いまきれいにしておりますから」
「そうじゃなくてぇ ……ひゃうっ、ってソコはっ」
 琴音が洗う位置を下方に移動させるにつれて、澄子の声が甘みを帯びてくる。 そして、ついに琴音の手が椅子の溝に入り込む。 スポンジが動くにつれ、澄子の意識が白く染まってゆく。

「澄子さま、大丈夫でしょうか?」
「あひゃいっ、だ、大丈夫ですよ?」
 琴音の声に、澄子は我に帰る。 目の焦点を合わせると、体中を泡だらけにした琴音が、シャワーの温度を確かめていた。 澄子が意識を飛ばしていたのはそれほど長い時間ではなかったようであるが、その間に琴音は自らの全身を洗ってしまっていたようである。
「返事がありませんでしたので、洗い方が悪かったのかと……すみません」
「いいえっ、ちょっと恥ずかしかったけど、すごく気持ちよかったですっ! ありがとうございましたっ」
 実は少々気持ちよすぎたのだが、琴音にされるのは悪くなかった。
「恐縮ですわ……では、シャワーを浴びたら湯船に入りましょうか」
「はいっ」

 二人で一つのシャワーを使って、身体についた石鹸を流す。 二人で同時に浴びると身体が密着し、また水流自体で、身体を洗われていたときの感触を思い出し、澄子の顔が赤くなる。 その後、浴槽に浸かると、琴音が澄子を抱き寄せ、澄子が琴音の胸を枕代わりにする格好になる。 この体勢になった澄子は、淑子の生前、お湯を節約するために母娘で一緒に自宅の狭い浴槽に浸かっていたことを思い出し、身体を反転させ、正面から抱き合う格好になる。 琴音の胸の柔らかさを顔で楽しんでいると、琴音と異なる柔らかい感触が全身にまとわりつく。 顔を巡らせると、先ほど琴音に追い散らされたメイドたちが、浴槽の中で再び集まってきていた。 集まってきたメイドたちは、再び澄子や琴音に身体を寄せてくる。 おかげで、広い浴槽にもかかわらず、おしくら饅頭状態になってしまい、二人とも少々のぼせてしまった。

ベッドでドキドキ

 騒動だらけの一日が過ぎ、自室(まだそんな実感はないが)で琴音に髪を乾かしてもらいながら、澄子は心地よい疲労感に身を委ねていた。 普段ならまだ眠る時刻ではないのだが、やはり疲労がたまっていたようで、目をつぶっていると、そのまま寝てしまいそうになる。 髪を乾かし終わった琴音が、澄子に尋ねてくる。
「澄子さま、お疲れのようですし、もうお(やす)みになられますか?」
「はい……そうしますぅ〜」
「それでは、失礼いたしますわ」
 そういうと、琴音は澄子をいわゆる「お姫様だっこ」で抱えあげ、ベッドの上まで運んで、掛布団を掛ける。
「あの……琴音さん、伯母さま達にもこういうコトをしているのでしょうか?」
「いえ、いま澄子さまにしたのが初めてでございますわ。 ココまでご奉仕したいと思ったのは、澄子さまが初めてです」
 そう言われると、嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な気分になる。

「こちらのボタンを押されますと、私どもがすぐに参りますので、何か御用のあるときは遠慮なく押してくださいませ」
「でも、深夜だと迷惑なんじゃ……」
「大丈夫ですわ、澄子さまのためですから」
 枕元にあるメイド呼び出しボタンの使い方を説明して、琴音は澄子の部屋を去ると、部屋に静寂が訪れる。 澄子は生まれてからずっと家では(別々の寝室などないので)淑子の隣で寝ていたし、一人旅もしたことがないので、今まで独りで寝たことがなかった。 それが今後はずっとこの広い部屋で独り寝になると思うと、急に寂しさがこみ上げてくる。 自分以外誰も居ない空間の心細さに、涙が溢れてくる。 かつての母の温もりと、今日味わった琴音の感触が澄子の中で重なり、その感覚の中でないと今夜は眠れそうもなかった。 夢中になって、教えられたばかりのボタンを押す。

 自室に戻った琴音は、就寝するためにメイド服を脱ぎ、愛用のネグリジェに着替える。 その間も頭の中は澄子のことばかり思い浮かぶ。 例え一晩でも、この場に澄子が居ないことで胸が痛み、今までの澄子の姿を思い出すと、琴音の身体で、奥深くから熱が感じられるようになる。 そんな状態でベッドに潜り込もうとしたところで、主人からの呼び出しが掛かる。 呼び出したのが澄子だと認識すると、掛布団を跳ね飛ばし、ネグリジェ姿のまま澄子の寝室に駆け込む。 そこには、ベッドに上半身を起こし、涙で顔をぐしゃぐしゃにした澄子が居た。
「いかがなさいました!?」
「あ、あの……あのね、寂しいの。 独りはイヤなの」
 その言葉を聞いた琴音は、枕元に腰をかけ、いとおしげに澄子の頭を抱く。
「今は私が居りますわ」
「琴音さん……」
 その後は言葉にならず、澄子は琴音の胸で泣き続けた。

 澄子の泣き声が止んだ後も、しばらくそのままの状態であったが、ふと澄子が顔をあげる。 その顔は、やや恥ずかしげに赤みを帯びていた。
「あの、琴音さん……」
「はい、なんでしょうか」
「その……一緒に寝て欲しいんだけど……いい?」
「はい、もちろんでございます」
 琴音が澄子のベッドにもぐりこむと、今度は澄子の身体を抱きしめる。 澄子と一緒に寝られることだけでなく、澄子が琴音に敬語を使わなくなったことが、二人の距離が縮まったようで嬉しい。 澄子の華奢な感触は、これまでの愛しさに加え、彼女の感触をもっと楽しみたいという感情を琴音に抱かせた。
 一方、澄子は、琴音の胸を両手で包んだ上で頬を寄せた。 琴音は寝るときにブラをつけないので、澄子はネグリジェ1枚のみを隔てて琴音の胸の感触を楽しむ。 その感触はこの日だけで既に何度も味わっているが、その度ごとに恥ずかしさよりも愛しさが勝るようになってきた。 いつの間にか、手が琴音の胸の上でゆっくり動いていた。
「琴音さんの胸、お母さんみたいで気持ちいい……」
 澄子の顔は嬉しげであるが、その目には再び涙が浮かんでいた。
「澄子さまの手も、気持ちようございますよ」
 琴音が返す。 周囲には堅物扱いされている琴音も、美少女(澄子本人に自覚はないが)に胸を揉まれれば、内なる欲望を刺激される。 澄子のパジャマの内側に手を滑らせ、控えめな胸を揉み返す。 そのうち、お互いの肌の心地よさに、二人の意識は眠りに落ちていった。

目が覚めてドキドキ

 翌朝、琴音が目を覚ましたとき、やはり二人で抱き合っていた。 ただし、昨夜と異なり、二人とも胸をはだけ、お互いの胸を直に触れ合わせていた。 記憶を手繰ると、羞恥で顔が赤くなる。 最後の一線を越えていないことを記憶で確認して安心したり、目の前の澄子の唇にキスしたい衝動を懸命に抑えたり琴音の脳内が忙しくなったところで、澄子の瞼が動き、目を覚ます。
「ふにゃ……琴音さん、おはよう」
 のんびりした調子で挨拶するが、現在の二人の姿を認識すると、たちまち顔を赤らめる。
「きゃっ、ごめんなさい、昨夜は琴音さんにあんなコトをしちゃって……」
「いえ、私の方こそ、澄子さまにとんでもないコトを」
「でもでもっ、琴音さんに触られたのは気持ちよくて、あの、イヤじゃなかったからっ」
 お互いに混乱して、一時会話が噛みあわなくなったが、会話を続けているうちに、落ち着きを取り戻す。

「琴音さん、あの、また寂しくなったら、一緒に寝ていい?」
「はい、澄子さまの仰せとあらば、毎晩でも」
「よかった……またこうやって、抱き合って寝ましょ」
 今度は嬉しさから、琴音に抱きつく。 お互いの胸が押し付けられ、その感触に二人とも再び赤面する。 琴音は、次に一緒に寝るとき、自分自身の理性が保つか自信がなくなってきた。
「あ、あの、そろそろ起きましょうか」
「うん……」
 琴音はネグリジェを直した後、自室で手早くメイド服に着替える。 澄子は衣裳部屋で多数の服に途方に暮れていると、琴音が戻ってきて、服選びを手伝ってもらう。

 身支度を終えた琴音と澄子が食堂に現れると、食事係のメイドが二人に声を掛ける。
「本日の琴音さんと澄子お嬢様の朝食は、特別メニューとなっております」
 席に着くと、二人の前に料理が運ばれて来た。 朝食らしい軽い和食メニューで、ほとんどの皿は他と同じであった。 但し、白飯の代わりに赤飯が置かれていた。 「特別メニュー」とはこの赤飯の事のようだ。 二人で顔を見合わせて戸惑っていると、既に席についていた瞳が説明する。
「昨夜は琴音と澄子ちゃんの記念すべき夜を過ごしたみたいだから、私が料理係に頼んだの」
「あ、アレは澄子さまが寂しがっておられたので一緒に寝ただけで、決して奥様が御想像なさるようなコトはっ……しておりません……多分」
 琴音が抗議するが、昨夜の記憶がよぎるごとに、声の調子が弱くなる。
「ふぅ〜ん……昨夜はどんなだったの? 澄子ちゃん」
「お母さんと寝ていたみたいで、気落ちよかったですっ」
「そうなんだ〜、良かったわね、澄子ちゃん」
 澄子の返事を聞いた瞳は、澄子には優しげに微笑む一方、琴音には意味ありげにニヤニヤと笑いかける。

「ちょっと、どういうコトなのっ!!」
 叫び声をあげたのは、瞳と一緒に食事をしていた菖蒲であった。
「琴音ったら、わたくしより先に澄子の貞操を頂いちゃってたのねっ! 最初はわたくしが頂くつもりだったのにっ」
 その発言に、周囲のメイドたちも騒ぎ始める。
「え〜、琴音ったら意外と大胆ね〜」
「じゃあじゃあ、私も澄子お嬢さまとあんなコトやこんなコトしたい〜」
「じゃあ私は、後ろの……」
「落ち着いてください皆さんっ! 誤解ですっ、そんなコトまではしてませんっ」
 菖蒲に続いて、メイドたちが次々に朝から(澄子の貞操にとって)危険な発言を始めたのに対して、琴音が反論する。
「菖蒲〜、今の発言はちょっと露骨じゃないかしら〜?」
 瞳はやはりニヤニヤしている。
 澄子はというと、自分の貞操が朝食の話題になっていることに目を白黒させながらも、これからにぎやかで楽しくなりそうな予感を感じて、楽しげに皆のやり取りを眺めていた。


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