四葉・鈴凛のチェキな一日

 探偵の朝は早いデス。冷たい水で顔を洗って、しっかり目を覚ましマス。もちろん朝食もしっかり食べマスが、その前に鈴凛姉チャマを起こさないといけないデス。四葉が起こさないと鈴凛姉チャマが遅刻してしまうデス。

「姉チャマ〜…朝デスよ〜〜〜」
 姉チャマの部屋のドアを開けると、鈴凛姉チャマが作ったアンドロイドのメカ鈴凛姉チャマが、姉チャマを起こそうとして……って……
「メカ姉チャマ!! 何をしているデスカ!!」
「あ、四葉さん、おはようございます」
「おはようございマス…じゃなくて! 何をしているのか聞いているデス!」
「もちろんマスターを起こそうと……」
「四葉のチェキでは姉チャマにキスしようとしていたように見えマス」
「口を塞げばマスターも起きるかと思いまして……」
「口で塞ぐのはダメデス! 姉チャマの唇は四葉が予約済みデス!!」
 普段は姉チャマと正反対に内気なくせに、まったく油断も隙もあったものじゃないデス……。

*

 私ってば、朝が弱いんだ。夜遅くまでプログラミングやメカりんのメンテをしているのが原因なのは判ってるんだけど、夢中で作業をしていると、ついつい遅くなってしまうのよね。それでメカりんや四葉ちゃんに起こしてもらうのだけど……今日は揺すられたり掛け布団を剥がされたりする前に目が覚めちゃった。

 目が覚めてみると、四葉ちゃんとメカりんが言い争いをしていた。多分このせいで目が覚めたと思うんだけど…私の目が覚めたのに気がついたら、二人とも顔を赤くして黙っちゃった。何でだろ?
 着替えと洗顔を済ませて食堂に行くと、四葉ちゃんは既に自分の席についていた。私は四葉ちゃんの隣の席につく。これまでは寝坊して朝食を抜くことが多かったんだけど、四葉ちゃんがイギリスから帰ってきてからは、一緒に朝食をとるのが楽しくて、朝食を抜くことがなくなったんだ。

 四葉ちゃんは私の通っている若草学院に編入したから、登校も一緒。四葉ちゃんはくるくると良く動いて可愛いし、おしゃべりなので、見ていても話していても飽きないんだよね。
 校門の中に入ると、それぞれの教室に向かう前に、四葉ちゃんの頬に「お別れのキス」をするのが日課になっているの。私には少し照れくさいけど、イギリス帰りの四葉ちゃんには家族のキスは当然みたいで、キスをしないと「四葉のこと嫌いデスカ?」と泣き出しちゃうから…始めは仕方なくだったけど、今じゃ私も楽しみになっちゃった。

 学校では四葉も授業を受けマス。授業は退屈デスが、お昼休みに姉チャマをチェキするのは楽しみデス。そっと教室を出て、こっそり姉チャマの教室に向かいマス。途中でトイレに寄ったのはご愛嬌デス。…ところで、ここの女子トイレって、時々、個室の中から切羽詰った声で鈴凛姉チャマを呼ぶのが聞こえるのデス。こんなところで呼んでも姉チャマは来ないと思いマス。

 鈴凛姉チャマの教室に着くと、他の人に見つからないよう、そっと中を窺いマス。ムム……あそこにいるのは小森姉チャマデスね。四葉のカンペキ秘密調査によると、彼女は四葉の最大のライバルデス。同学年なのに、なぜか姉チャマのことを「お姉さま」と呼んでいマス。現に今も、目をハートマークにして廊下のほうを眺めていマス。その視線の先には……
「四葉ちゃん、一緒にお弁当食べよう」
 ……姉チャマにチェキされてしまいマシタ。

*

 お昼休みになると、決まって四葉ちゃんが私のいる教室に来るんだよね。本人は隠密行動のつもりみたいなんだけど、廊下で忍び歩きしていたら却って目立つよね。だから、「あれ、鈴凛ちゃんの妹じゃない?」「また来てるぜあの子」「四葉ちゃん可愛い!」と大評判。まぁ、四葉ちゃんが可愛いのは当然として、問題は四葉ちゃんが周囲の騒ぎに気づいていないことだよね。本当に名探偵になれるのかな…?
 で、私が既に真後ろにいることも気づかずに、四葉ちゃんは教室を覗き込んでいたりして。こちらを振り返って、私に声をかけられたときの四葉ちゃんのばつが悪そうな顔といったら、思わず抱きしめたくなるくらい可愛いんだ。

 今日は天気がいいから、一緒にお弁当を食べるために中庭に行くと、既に白雪ちゃんと衛ちゃんがいて、白雪ちゃんが4人分のお弁当を用意していたの。私たちは白雪ちゃんからお弁当を受け取って、恐る恐る蓋を開けると…よかった。普通のお弁当だ。
 姉妹でのお弁当タイムは私の好きな時間のひとつ。他愛のないおしゃべりをしながら、料理を口に運ぶの。白雪ちゃんが衛ちゃんに「はい、あ〜んですの」ってタコさんウィンナーを差し出して、衛ちゃんが赤面しながらもそれを食べてたりして、二人とも仲良くって、可愛いんだ。そんな光景を見てたら、私も四葉ちゃんに……
「姉チャマ、あ〜んデス」
 ……四葉ちゃんも同じことを考えてたみたい。

 今夜のお風呂は、鈴凛姉チャマと一緒デス。姉チャマと一緒にお風呂に入れるので、四葉が女の子でよかったと思うデス。一緒にお風呂に入るときはやっぱり…
「マスター、お背中をお流しいたします」
 …なんでメカ姉チャマも一緒デスカ。四葉も姉チャマを洗いたいデス。背中はメカ姉チャマに取られたから……
「四葉は姉チャマのお腹を洗うデス」
「ちょっと四葉ちゃん、お腹は自分で洗うから…やだ、くすぐった……って、そこから下はダメ!! メカりんも胸を押し付けないで!!」
 断られてしまいマシタ。しかもメカ姉チャマはドサクサ紛れに何をやってるデスカ。
「でも咲耶さんが、女の子の背中はこうやって洗うものだと…」
「お風呂のことを咲耶ちゃんに教わるのはやめて……」
 咲耶姉チャマ、メカ鈴凛姉チャマにヘンなこと教えるのはやめてクダサイ。

 姉チャマに断られたので、自分の身体を洗いマス。すると、今度は姉チャマのほうから声をかけてきマシタ。
「さっきはごめんね。今度は私が四葉ちゃんの背中を流してあげる」
 チェキー! 姉チャマが四葉の背中を流してくれマス!
「その代わり、メカりんの背中流してね」
 ちぇき……でも姉チャマに背中を流してもらっていマスし、メカ姉チャマは肌触りも鈴凛姉チャマと同じなので、気分だけでも鈴凛姉チャマの背中流しデス。姉チャマの手が触れているところが気持ちいいデス。
 湯船も姉チャマと一緒デス。湯船の大きさの関係で、姉チャマと抱き合う格好になっているので、すごく気持ちいいデス。ちょっとイタズラして、姉チャマの手を四葉の胸の上に置いちゃいマシタ。すると、姉チャマの顔がみるみる赤くなっていきマス。特に鼻の下が……
 ……って…姉チャマ、鼻血出てマスーーーー!!!

*

 そんなこんなで、私は今、自室のベッドの上で四葉ちゃんに介抱されているの。姉が妹の胸触って鼻血を吹くなんて、情けないよね……。でも四葉ちゃんの胸、触り心地が…じゃなくて、もし鼻血が出なかったら、一線を越えてしまいそうで、ちょっとコワかったけど。四葉ちゃんたら、私のためにタオル1枚巻いただけの格好で膝枕してくれてるの。
「四葉ちゃん、私はもう大丈夫だから、もうパジャマ着て寝なさい」
 私のために一生懸命なのは嬉しいんだけど、このままだと風邪引いちゃいそうだからね。四葉ちゃんは心配そうな顔をして私を覗き込んでいたけど、私が笑顔を見せると、安心したように立ち上がったの。そして、「姉チャマ、お休みデス」と言いながら顔を近づけて……私の…唇にキスしちゃった……。
 私、今夜は眠れないかも……。


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